熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
何でもいいけど、適当に理由を言って帰ろう。
イケメン相手に、何話しても間が持たないし。
私は、ケーキにフォークを刺して切り分けた。
一切れ口に入れると、
チョコレートとクリームが絶妙のバランスで口の中で広がる。
至福の感覚。
口に入れてうっとりしてると、もう一人連れがいるのを忘れた。
せっかく幸せを噛みしめているのに、刺さるような視線を感じる。
絶品のケーキを味わいながら私は考える。
考えてるけど、さっきから私の頭は、全然回らない。
ケーキを食べたって、話の糸口が見つかるわけないではないけど。
やっぱりこのケーキ美味しい。
だから、でも、何で?
私のこと穴が開くほど見てるの?
そう聞けばいいのだけど。
「あなたは、まだ、私のこと思い出しませんか?」
ほら、先に言われた。
私は仕方なく、彼の顔をまっすぐ見つめる。
彼も私を見ている。
日本人のように、遠慮がちにちらっと見るのではなく
ものすごい眼力で、彼の黒い瞳がこっちを見ている。
「えっと……
あの、ごめんなさい。わからないわ」
わかりたくもない。
彼は、盛大にため息をついた。
そして諦めるように言った。
「そんなに思い出せないのものかな。
まあ仕方ないか。あれから、6年も経ってしまったからね」
なに?6年振りって。
彼に会うのは6年振り?
なら、私は大学生だった。
大学にいたアラブ人……
まさか、そんな。あり得ない。