熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
「ファイサル?」
おぼろげながら、学生の頃の彼の姿を思い出した。
「思い出してくれましたか?」
嬉しそうに笑う彼。
「思い出すも何も……」
全然別人じゃないの。
ファイサルったら、いつからこんなに豪華になったの?
きりっとした高級そうなスーツなんか着て。
落ち着き払って、自信ありげで。
なんでファイサルが?
今頃になって現れるのよ。
どうしてすぐに、思い出さなかったの?
忘れられるはずのない人なのに。
肉体的にも、精神的にも。
私は、大きなため息をつく。
でも、どうして今なのかな?
どうして?
突然戻ってきたの?
目の前からいなくなって、ずっと音沙汰なしだったのに。
彼は、私が通っていた大学に留学生として、
中東のどっかの国からやって来ていた。
でも、一年の留学期間が終わる前に、
彼は、突然帰国してしまったから、
それっきりになってしまった。
いろいろと思い出を残して。
だから、再会したのはそれ以来ということになる。
「元気そうでよかったわ」
いろいろありすぎて、
何から話せばいいのか分からない。
混乱して頭の中が整理できない。
早くも私の頭は、
ここから逃げ出すことばかり考えてる。
少し、落ち着いて。
彼の方も、いろいろあって、
6年も前のことなんか忘れてるかもしれないし。
そうだ。
これだけハンサムなんだから、
女性だってたくさんいるはず。
有能なビジネスマンて感じだし、
私よりは刺激的な生活してそうだし。
女性の一人や二人いるはず。
そうに違いない。
知り合いだったから、
社交辞令で声をかけて来ただけかもしれない。
機嫌よく昔のお話でもして、
では用事があるので失礼しますと退散すればいい。
それで、当たり障りのない会話。
差しさわりのない言葉が、浮かんでこない。
「美夜先輩の方も」
「ええ……元気よ」
私は、彼につられるように少し微笑んだ。
笑うことが出来て、緊張がほぐれた気がした。