熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
とにかく落ちつこう。
出会ってしまったものは、どうしようもない。
すっかり忘れてましたっていう態度は、
彼に見破られたじゃないの。
ファイサルだって、
久しぶりですねって、
声をかけたかっただけじゃないのかな?
恋人いますか?って、
聞いて来たわけじゃないし。
昔話がしたい?
そうだよね?
まず考えるのは、そっちだ。
久しぶりに会った大学の同級生。
6年前にちょっと何かあった女と、
どうにかなりたいって今さら思うはずがない。
今さら、
昔に戻ろうなんていうわけないだろうし。
それなら、
しばらく彼に話を合わせていればいい。
そうよね?
ひょっとして、6年前のことなんて、
忘れてるかも。
そう言えば、
そんなことがあったねって笑ってくれるかも。
急にいなくなって済まなかったって、
話がしたいだけかも。
それにしても……
ずっと見られているんですが……
「ねえ、ファイサル?えっと、顔が恐いよ」
忘れてたから、怒ってるのかな。
「あなたに会えば、再会したことを、
もう少し喜んでくれると思いましたが。
それは、私の思い違いですか?」
彼が伏し目がちに応える。
「そんなことないって。
嬉しいよ。すごく嬉しいけど。
あんまり急なことで、
戸惑ってるの。
だって、
あなた見違えるように男前になって現れたし。
上手に日本語使ってるし」
ねえ、お願いだからそんなにじいっと見ないで。
「見違える?私は、そんなに変わりましたか?」
「うん。うん。別の人みたい」
あなたみたいな人がいきなり現れて
同級生ですって言われたら、
誰だって戸惑うと思うけど。