熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~


部屋は、
貴賓室とは変わらない。

充分な広さがあった。

新しい部屋だから、設備も整っている。

でも、部屋の中は静かだった。

部屋の中には、私たち以外誰もいない。

でも、常に周りに人がいた
ファイサルにとっては、異常かもしれない。


何人もいた黒服の男たちの姿も見えない。

彼らが口きくわけじゃないけど。

誰もいなくて大丈夫なのかな。



広い部屋の中で、
ホテル側の歓迎する花束とシャンパンが、
殺風景な部屋を華やかに彩っている。

「何かあったのね?」


「美夜、このシャンパンてやつは、美味いのか?」
私の質問を無視して言う。

「そうね。美味しいかどうか試してみる?」

「ああ」
冷えたボトルを手に取って、
グラスにほんの少し注いだ。

「君にも」

彼は、私のグラスにもジャンパンを注いだ。

どうしたの?
何度も口に出そうとして、押しとどめる。

何があったのか、彼が話してくれるまで待つべきだ。

頭では分かっているけれど、気になってしまう。


ファイサルは、ゆっくりとグラスを口元へ近づけ、
鼻で香りを確かめる。

「酷い、と思ったら止めていいのよ。
無理して飲まないで」
今まで飲んでこなかった人間には
刺激が強すぎる。

彼は、笑って言う。
「美夜、その、子供に言い聞かせるみたいに
言うのは、止めてくれ」
彼は、笑っていた。

でも、どこか悲しげで、
すっきりしない顔をしている。
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