熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
「ファイサル?
ビジャールの国籍を抜くってことは、
どうことか分かってるの?」
私は、身を乗り出して
ファイサルの肩を掴んだ。
「どういうことって言うのは、
ビジャール人じゃなくなるってことかい?」
彼は、平然と言う。
「普通の人だって
決断するのは大変なことよ。
それなのに。だって、
あなたは一般人じゃないでしょう?」
「そうだね。だから祖国に帰って、
めんどくさい手続きをしてきたんだ。
私はね、美夜。
第一王子としての身分を捨て、
廃位する手続きをしてきたんだ。
国王の許しがあれば、
議会にかけなくても王子を辞めると
許可をもらえばいいんだ。
私は、父に自分の考えを伝えて来たよ」
「ファイサル……
自分がしてることが
どんなことか分かってるの?」
彼の顔は、
迷いのないすっきりした顔になっていた。
「私は、生まれた国を捨てて、
君と、この日本で生きていくよ」
「ファイサルそんなこと、
簡単に決めていいの?」
「もう遅いよ。美夜。
届けは受理された。
取り消しはできない。
国王の許可が出たんだ。
だから、これからはどこに行くにも、
何をするにも自由だ。
今後はいっさい、国の監視を受けない。
私は日本人だからね。
そのかわり、貴賓室に泊まったり、
リムジンに乗るような
国賓待遇はないけど、いいかな?」
「ファイサル、だめよそんなこと」
「まさか、私が日本人になっても
断るっていうのか?
君は、そこまでしたのに私を拒むのか?」
彼が、優しく言い聞かせるように言う。
「違う……
あまりのことだから、
どう受け止めていいのか分からない」