熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~



「ということだから。君は今日一日、
私と用事で会社の外に出かける。
今日は、ずっと私と一緒だぞ?分かった?」

朝の9時。

だいたいのビジネスマンは、
その日の時間のやりくりをどうやって
調整しようか頭を悩ませているころだ。

なのに、ファイサルは今日の予定は、
不動産を数軒回ることだけだといった。

しかも、自分が住む予定のもの。

普通なら、自分の住む場所なんて、
仕事が休みの日に探すものだ。


「ファイサル?
日本人になったら途端にやることがなくなったの?」

「そういう訳じゃないぞ。
お金を稼いで生活を成り立たせ、
君を食べさせていかなければならない。
夫に課せられた重要な仕事がある」

私は、笑いながら聞く。
「やり手のビジネスマンは、
どうしちゃったの?」

「今のところ、
お休みだ。調整期間かな。
十分働いてきたんだ。
少しのんびりしようと思う。
目まぐるしく世界中を飛び回る必要は少なくなったからね」


「国の第一王子という
立場がなくなると、
仕事がやりにくくなるの?」

「いいや。それはないよ。
むしろ、ビジャールに縛られず、
自由に仕事ができるようになったから、
増やすのは問題ない。
というより、増やせと要求がたくさん来ている」

「けど?」

「増やしたくないんだ。
お金には困っていない。
君とこうして話している間も、
投資したお金は順調に増えているよ。

今のところ、新婚だから仕事はしないと断っている」

「どういうこと?
そんなわがまま通るの?」

「ずっとは無理だろうね」

「仕事、つまらなくなったの?」

「つまらないんじゃない。
時間が欲しいんだ。
君とのんびりしたい。

何もかも希望通りだよ」

「少し、のんびりするの?」

「ん、住む部屋を決めて
新婚旅行にでも行こう。

チョコレートケーキを食べて、
映画も見る。
今までできなかったこと、全部やるんだ」

「本当?」
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