熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
「これじゃあ、
ほとんど持ってくるものはなさそうね?」
ひと通り、部屋の中を見回した。

これだけそろっていれば、
足りないものを探す方が難しい。

「使い慣れた家具がいいなら、
取り換えてもらいなさい」

ファイサルがダメ押しをする。

「いいえ、部屋に合うように
計算されて選ばれてるんだもの。
このままの方がいいわ」

先日、ビジャール大使館に行って
結婚するために手続きを行ってきた。

その後、区役所に婚姻届けを出して、
私は正式にファイサルの奥さんになった。

「本当に、ここに住むの?」

日本にっていう意味だ。

私は、彼が国籍まで変える
必要があるのだろうかと思ってるからだ。

「ファイサル?本当にこれで満足してる?」
私は、不安に思っていることを、
とうとう口にした。

あれだけ公私ともに忙しくしていた人が、
ほとんど何もしないように家にいる。

長い時間、物思いにふけっていたり、
やり始めた作業が止まったままだったり。

彼が、国を捨ててきたことを
後悔してるのではないかと、
思ったことを口にした。

やっぱり、悩んでるのかなと思った。

「どうして、そんなふうに思う?」
「だって、
あなたが楽しそうには見えないから」
彼は、とうとう笑い出した。

「美夜、逆だよ。
私は、今自分が幸せでいられて、
こんな日が続くのかどうか、
本当にこんなに幸せでいいのか?

長く続くのかどうか。
そっちの方が心配なんだよ」

「幸せ?本当に?」
「だって、世界中で一番一緒に居たい人と、
仕事中でもその人を独占して。

その上、その人を奥さんにしてるんだ。
こんなに幸福な男はどこにいる?
毎日、朝、起きると隣に君がいる。
それのどこが楽しくないんだ?」
< 211 / 295 >

この作品をシェア

pagetop