熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~

「たった一週間、
この日に合わせてくるだけの価値はあるかもね」

彼は、すっかりこの景色に見入ってしまって息をのんだ。


「そうでしょう?」

「でも、日本に来たかった理由は、
桜でもビジネスでもないよ」

「そう?他にも、楽しみにしてるものがるの?」

「美夜、こっちへおいで」
彼が強引に手を引っ張る。

ファイサルは、
どんどん人の流れから外れていった。

いつの間にか、明かりが届いていない暗い木の裏側に回った。

「楽しみにしてたのは、君だよ。
美夜、君にずっと会いたかった」

彼は、私を木の幹に押し付けて、
ぴったり体を寄せている。

止めて。こんなこと。

心臓がバクバクして、破裂しそうになっている。

私は、彼の毒気に触れて、
遠のいていきそうな意識を奮い起こす。


「楽しみにしてた?嘘よ。
それはないでしょう。空港で、
偶然会ったって言うのに」

近すぎる。
触れるほどの距離に顔を近づけてくる。

「日本に来たのは、君を探すためだ。
東京に着いたら、
すぐに君に会いに行こうと思ってた」

距離をあけたのに、
長い腕で引き戻してぴったりくっ付けられる。

「よかった。偶然会えてよかったね。
一応、そういうことにしておく」

「会えたのは偶然だけど、
ただ偶然に会ったわけじゃないよ」

指で顔をなぞられた。
反応しないように木の幹に背中をくっつける。


「美夜、君に聞きたい事がある」

彼の手が私の頬に添えられる。


「どうしたの?遠慮しないでなんでも聞いて」

彼の言いなりになんかならない。

下を向いて視線をそらすと、
すぐに彼の目を見るように指で直される。

彼は、キスするのかと思うほど顔を近づけて来た。

「美夜は、君は誰かと結婚してるの?」

ん?

「随分はっきり聞くのね」

「答えて」

まるで、病院でアンケートに答えるようないい方。

「結婚?何でまた、そんなこと聞くのよ」

「どうなんだ?」

「結婚は、してないわ」

「よかった」
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