熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
「わかってる。
ファイサルは、一度だってビジャールを忘れたことないでしょ?」
「美夜のことだって、
負けないほど大事だ」
私は、ファイサルの目を見つめた。
迷いのない目。
強い意志を持った顔。
多分、どちらか選ばなければならない時は、
自分の立場を選ぶように出来ているのだ。
だから、
私が入り込む余地なんて最初からなかったのだ。
私は、立ち上がった。
どうしたら、
この人が自分のものになってくれるのだろうか?
そんなことを考えても、
無駄だということは分かっていたのに。
前に、一度捨てられて、
痛い思いをして身に染みていたはずのに。
ファイサルと再会したら、
嬉しくて、警戒心なんてどこかに行ってしまった。
「美夜……」
どんなにきつく離れないようにと
抱きしめてくれても、
この人の目はビジャールの人々を見ている。
いくら熱い思いで
愛の言葉をささやいても、
私を抱きしめていた腕を離せば、
彼の頭はすぐに私のことを忘れて違うことを考えてる。
駐車場の方に歩きかけた時、
車の横にいる人影に気付いた。
「美夜、待って」後ろからファイサルが抱きすくめた。