熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~



ファイサルは、黒服の人に何か話しかけているところだった。
「行ってらっしゃい」
私は、出ていこうとするファイサルに声をかける。
軽くキスを交わして彼は部屋を出ていく。


彼と入れ違いに別のワゴンを押した黒服を着た人が入ってきた。
朝食を並べたワゴンがいくつも並べられ、もう一度
「何になさいますか?」と聞かれた。

いくら何でも、多すぎる。
さっき頼んだのに、フルーツを追加してもうお腹いっぱいだった。

私が選んだもの以外は、そのままお皿に乗せられたまま下げられようとしている。

お腹にあれを入れられるスペースがあるならば、詰め込んでおきたいのに。
全部は無理だ。

「どうして、食べたいものを聞いてから用意しないの?」

ホテルの客室係の男性が、ちょうど目の前のワゴンを引いて出て行こうとしたので、そう尋ねた。
彼は、私の話も聞かずに頭を下げた。

「はっ、申し訳ございません」
そして、ものすごい勢いで謝られた。
そ、そんなに謝らなくても……
「こちらのお客様が、すぐに用意できるものすべてお持ちするようにと、申し付けられましたので」
「ファイサルがそう言ったのね」
「い、いえ。そのような不満を述べたかったわけではなく……」

私は、部屋の隅にへばりつくように立っている黒服の男の方を見た。
「あなたたちは、食事は済んだの?」
「はい」と勢いのいい返事が聞こえた。
「そう」無表情でにこりともしないで立ったままだ。
あの二人、ずっと昨日から部屋の中にいたのかしら?

昨夜のは分からないけど、さっきのは聞かれたわよね?
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