熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~


『ありがとう。せっかくだから、
二人でこのお部屋を使わせてもらいます』

ファイサルに言われて、
千紗と二人で、インペリアルホテルの
スイートルームに泊まることにした。

彼は、
「おやすみなさい」
と日本語で言うと頭のてっぺんにキスをした。

彼が、部屋を出ていった。


どういう訳かこのまま、
別れてしまうのが寂しい気がした。

ふと、窓の外を見ると、
素晴らしくきれいな夜景が目に入った。

景色を見ながらしばらく、
彼のことを考えていた。

こうして見る夜景も、
彼と同じで、どこか寂しげな感じがする。

夜景に見入っていると、
いつの間にか千紗が横にいた。

「美夜?」と声をかけられて、
彼女が部屋に入って来たことを知った。

「千紗……」
彼女の顔を見たら、
さっきの寂しいと思っていた気持ちは、
どこかに消えてしまった。

「アラブの王子様とは、
何ともなかったの?」

豪華なバスルームを堪能して、
バスローブ姿で出て来た千紗が言った。

「よくわからない」
二人の間に何が起こったのか、
私にはよくわからない。

自分がどんな立場に置かれて、
彼が何を考えているのか。

「何でもいいけど、ゴージャスだよね。
日本に来てから、
何泊もここで過ごしてるんだって」
千紗が、部屋を見回して言う。

「そうだね」

豪華だけど落ち着かないよ。

自分家じゃないんだもん。

「こんな場所に、
ずっと住む気なのかな?」

一泊で私達の下宿代、
何ヵ月分は消えるだろう。

「でも、もう少し
日本にいる理由が出来たから、
マンションに住むらしいよ。
ムスタファが言ってた。

ファイサルが、
どこかいい物件がないかって探してるって」

「部屋を借りるの?」
「その方が安上がりだろうからね」
「いったい、彼らは何者?」

「それをファイサルから、
聞いたんじゃなかったの?」

「誰なのかなんて、
聞いちゃいいないよ。
私には関係ないもの」

「まあ、間違いなく
お金があるのは間違いないけど」
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