レンタル彼氏–恋策–


 ウワサや凜翔の件が気になったものの、心晴のおかげで元気を取り戻し、その日も夕方からバイトに行った。

「矢野(やの)さん、ちょっといい?話しておきたいことがあって」

 タイムカードを押すなり店長にそう言われ、事務室に連れて行かれた。

「店長……?」

「今日から新しいバイトが入った」

「そうなんですか、よかったですね」

 求人で募集をかけてもなかなか人が来ない。前に昭とそういう話をしたのを思い出し、安心した。これで皆のシフトに余裕ができる。

「まあ、店にとっては喜ばしいことなんだが、矢野さんにとっては良くないことかもしれないから」

「どうしてですか?」

 店長は気遣わしげな視線を向けてきた。

「……新人ね、海崎(かいさき)君の彼女なんだよ。なんでも海崎を追ってバイト希望してきた感じで。しかも、彼女も君達と同じ大学だっていうし……。矢野さんが仕事しづらくならないか心配で」

 昭の彼女って、同じ大学なの?もしかして私も知ってる人?誰ーー?

 不快な気分でめまいがし、ふらついてしまう。

「大丈夫!?」

「すいません、平気です……」

「ごめんね。店の状況考えると、こうするしかなくて……」

「そんな、店長は何も……。こっちこそ私情持ち込んで申し訳ないです。昭のことはもう大丈夫ですから」
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