レンタル彼氏–恋策–

「ははは。そっかぁ、紗希ちゃんには私がそう見えるんだ。じゃあ、あと2年後には紗希ちゃんもおばさんだね。それまで昭に好かれてるといいけどね」

 無感情に言い残し、私は一人で更衣室を出た。

 強気で言い返したのはよかったものの、次の瞬間、絶望感でいっぱいになった。

 今のやり取りは、紗希ちゃんを通して凜翔(りひと)の耳にも入る!しかも、実際より悪い表現となって!明らかに私の方が不利だ……。

「終わった……」

 女のプライドとか、言われっぱなしで悔しいとか、そういうマイナスの気持ちが、紗希ちゃんの一挙手一投足で簡単に爆発してしまった。よく、人の中身は関わる人間の質に左右されるというけど、それってこういうことなのかな。しみじみと実感する。

 今後も紗希ちゃんには深入りしたくないな……。精神衛生上よくない。でも、彼女は凜翔と同じ学部でタメ。そして、同じ軽音楽部に入るくらいの仲。

 紗希ちゃんと昭が付き合ってるんだと分かった今、彼女と凜翔の関係がますます謎めいてくる。恋人同士じゃないのはたしかなのに、どうして凜翔はそう言ってくれなかったんだろう?

 軽音楽部の部室で再会した時、紗希ちゃんとの関係について凜翔は何も言わなかった。そして、私と紗希ちゃんに会ってほしくなかったとハッキリ言った。
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