レンタル彼氏–恋策–
もう二度と会えないと思ってた。
「放っておけるわけ、ない」
泣きそうな顔で笑い私の手を引くと、自分の上着を私の肩に羽織らせ、凜翔は彼女達に言った。
「そうは見えないだろうけど、これでも少林寺拳法やってたから。次ひなたに何かしたら、女でも許さない」
「凜翔……」
私達を囲む女子達を邪険な手つきで押しのけ、凜翔はどんどん歩いていく。その足は大学の駐車場に向かっていて、私達は凜翔の車が停めてある所へたどり着いた。ドライブのことを思い出して照れくさくなる。
「家近いから普段は歩きで来てるけど、遅刻しそうになって。今日は車でホントに良かった。そんなんじゃ電車乗って帰れないでしょ、乗って?それで頭とか拭いていいから」
私に羽織らせた上着を視線で示すと凜翔は心底安心したようにため息をつき、私を助手席に乗せた。その時、凜翔の手が軽く背中に触れてドキッとした。
突然の再会に気持ちがついていかず、いまいち現実感に欠けていたけど、運転席に座る凜翔の横顔を見て、これは本当のことなんだと胸が弾んだ。ずっと会いたかった凜翔とこうして同じ空間にいられることが嬉しくて嬉しくて、頭や服が汚れていることも忘れてしまう。
「ありがとう、助けてくれて。でも、どうしてあそこにいるって分かったの?」
「……ひなた無防備だから、いつこういうこと起きてもおかしくないと思って、先日から見張ってた。変なウワサも流れてたし……。教材室行く途中に友達に呼び止められたせいで、助けに入るの遅くなったけど……。こわい思いさせてごめんね」