レンタル彼氏–恋策–
凜翔は悪くない。私は力いっぱい首を横に振った。
「知らなかったよ……。見守っててくれたことも、少林寺拳法やってたってことも……。ピアノ弾けるってことも驚きだったのに……」
凜翔は、色んな顔を持ってる。これからももっと、彼を知りたい。
戦隊ヒーローみたく勇敢に助けてくれた凜翔。おかげで髪を切られずにすんだし、大きなケガもなかった。どうしてそこまでしてくれたの?
甘い期待が湧き、胸が高鳴る。さっきまで色んなことに冷めていた気分は、凜翔の存在ひとつで簡単に色づいていく。
「ありがとう。ずっと会いたかったよ。凜翔に……」
「ひなた……」
それきり、凜翔は私と目を合わせることなく運転に集中した。会いたかったなんて言って、迷惑だったかな?でも、やっぱり幸せ。
不安と期待。先の分からない恋は、いい意味でも悪い意味でも胸を躍らせた。
決めた。凜翔のそばにずっといたい。車を降りたら、彼の目を見てちゃんと告白しようーー!振られたとしても、凜翔と出会えて楽しかったんだってことは、伝えたい。
そう強く思っていたのに、凜翔が車を停める前、私の思考は停止した。
「ここって……。え…?」
冗談だよね……?どうして凜翔がこんな所に?