レンタル彼氏–恋策–

 不安と緊張。交互に胸を染めるプラスとマイナスの感情でドキドキが止まらない。何とか平常心に落ち着きたいと思いつつ、気分は思い通りになってくれない。

 その時だった。彼に声をかけられたのは。

「矢野ひなたさんですか?」

「は、はいっ」

 声が裏返ってしまったのは、その人があまりにも爽やかでかっこよかったから。恥ずかしさと緊張感が増し、思わず彼から目をそらしてしまう。

 どうして私のこと分かったんだろう?あ、そうか。事前に心晴が私の写真をこの人に見せたと言ってたな。

「はじめまして。凜翔(りひと)といいます。今日はこうしてお会いできてとても嬉しいです!」

 凜翔君は満面の笑みを見せた。乗り気じゃなかったのにそんな反応をされると、いたたまれない。高校生か大学生になりたてなのかな?服装や見た目は大人っぽいけど、彼の話し方はどことなく年下っぽい。

「あの…!私こういうの初めてで、何したらいいのか全然……」

 正直になろう。凜翔君にはそうした方がいいような気がして、私は今の気持ちを口にした。

「なので、今日、失礼があったらごめんなさい。先に謝っときます」

「ひなたさんは謙虚なんですね」

「え!?そんなこと初めて言われました」

「予約を取って下さった三枝(さえぐさ)心晴さんも言っていました。とても感じのいい女の子だって」

「心晴が?」

 嬉しいけど、恥ずかしいっ!心晴、この人とそんなこと話してたんだ!顔が熱くなってくる。
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