レンタル彼氏–恋策–
「え!?ちょっと、待って?どうしてそんなことしたの?凜翔のことだもん、悪意はないはず!理由があるんだよね?」
「言い訳はしない。ひなたを悲しませたのは昭だけど、間接的な原因は俺だよ」
その言葉が本当なら、昭と私が別れることになったのは凜翔が妨害したせいってことになる。紗希ちゃんじゃなく、凜翔ってことに……。
「ねえ、そんなのウソだよね?だって、凜翔と私はこの前のレンタルデートが初対面でしょ?凜翔がそんなことする理由がない…!」
「あるよ」
チェストから出した洗いたてのバスタオルを両手で私の頭にかぶせ、凜翔は言った。
「いつだったか俺が言ったこと、覚えてる?」
ーー好きな子に振り向いてもらうためなら計算するし、他者を悪者にすることも厭(いと)わないよーー
「ーー!!」
「思い出した?」
「そんな……。あれってそういう意味だったの?どうして?」
あんなに会いたくて大好きだった凜翔が、それまでと別人みたいに見える。でも、やっぱり悪い人に思えない。
何の感情がこもっているのか分からない声音で、凜翔は静かに言った。
「ひなたが部室に来た日、紗希に昭を紹介したのが俺だってことを紗希がひなたにバラしたのかと思った。全部バレたのかと思って、何も言えなかった。そうじゃなかったけど、それでも何も言い訳できなかった。ひなたのこと好きな気持ちに、ウソはないから……」
「好き?そんな……。だからって、わざと紗希ちゃんを昭に引き合わせるなんて、ひどいよ!昭と別れて、胸がすごく痛かった……!」