レンタル彼氏–恋策–

「うん、忘れ物して家まで取りに戻ったの。でもさすがに午前中のは間に合わないから、講義は午後から出るつもり」
『ウソつかないで。全部知ってるから』

 柔らかかった優の声が、瞬間でこわばる。

『俺の親衛隊名乗る人達に何かされたんでしょ?杏奈(あんな)ちゃんが教えてくれた。さっきたまたま構内で会って……』

「……杏奈が?」

『あの子めったに大学来ないみたいだけど、ひなたのことが心配で今日も様子見に来てたらしいんだ。彼女、凜翔君に助け出されてるひなたをたまたま見かけたらしくて、そのことをさっき大学で俺に教えてくれて……』

 まさか、杏奈がそこまで私を心配してくれてたなんて……。

「そうだったんだ……。でも、ホント大丈夫だし優は気にしなくていいから。ケガもないし」

『気にするよ……。もしかして、付き合ってた時からそういう嫌がらせってあったの?』

「ううん、それはない!今日が初めて」

 凜翔の脅し文句が効いたのか、親衛隊メンバーは凜翔を前に青ざめていた。

「これからはもう何もされないと思うよ。だから気にしないで?」

『自分でこんなこと言うのも嫌だけど、俺のファンクラブみたいなのがあることは知ってた。昭からそういう話されてたから。でも、そこまで悪質なことする人達だなんて思ってなかったんだ。こわい思いさせて本当にごめん……。俺のせいだ……』
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