レンタル彼氏–恋策–
「優が謝ることないよっ。私もあの子達に挑発するようなこと言っちゃったから自業自得だし!」
あえて明るくそう言ってみても、優の憂いは消えないみたいで、それから何度か深刻な声音で謝られた。
『どれだけ謝っても許されない。本当にごめん……。ひなた……』
「ホント、大丈夫だから。理不尽なことされたのはたしかに嫌だったし腹立ったけどさ……。あの子達が嫉妬する気持ちも分かるんだよね。好きな人が自分以外の人を見てたら、やっぱりつらいよ。誰だってさ」
凜翔が紗希ちゃんと付き合ってるのかもしれないと知った時、すごく嫌で、嫉妬で心が真っ黒になりそうだった。
『ひなたは強いね……』
「ううん、弱いよ」
『弱さを受け入れられる人は強いなって、俺は思うよ。それも、凜翔君の影響?おめでとう』
「おめでとうって?」
『彼と付き合えることになったんでしょ?遠慮しなくていいよ。俺達もう別れてるしさ』
「いや、待って!凜翔とは付き合ってない!」
『そうなの?杏奈ちゃんの話だと、凜翔君がひなたを大学から連れ出してたってことだったから、そうなんだとばかり……』
優は勘違いしていた。
「たしかに凜翔に助けてもらったけど、ホントそういうのはなくて……」
『そうなんだ……。勘違いしてごめん。でも、ひなたは凜翔君のこと好きなんだよね』
優と別れた日に凜翔のプロフィールを印刷した紙を見られてしまったことを思い出し、胸に苦いものが広がる。
「……優、凜翔と知り合いだったんだね……」
『凜翔君に聞いたんだね。そうだよ。昭んちに遊びに行った時、何度か話したことがある。凜翔君、たいてい家でピアノの練習してたから、一緒に遊んだりとかはなかったけど……』
「……そうだったんだ……」
私が凜翔のプロフィールを見てることを知って、相当傷付いたに決まってる。それなのに責めないでいてくれて、今も心配してこうやって電話までしてくれて……。謝ってすむことじゃないけど、何回謝っても足りない。