レンタル彼氏–恋策–
奥手で無口な凜翔なんて、全然想像つかない。凜翔はいつも適度な相槌を打ってくれたからすごく話しやすかった。かといって、優がウソをついているとも思えない。
優と昭は中学時代からの友達だ。もしその頃から優が凜翔と顔見知りだったとしたら、私の知らない凜翔の過去を知っているってことになる。興味が湧いた。
「優って、凜翔が子供だった頃からよくしゃべってたの?」
『よくってほどじゃないよ。凜翔君、俺んちの近所で少林寺拳法習ってたから、その関係でたまに顔合わせる程度で。一応こっちは年上だから色々話しかけてはみるんだけど、凜翔君はそっけないというか人見知りなタイプで、よくしゃべる昭とは真逆だなって思ったよ。でも、大学生になってから凜翔君は変わったよ。優さん達には負けない。面と向かってそう言われてビックリした。彼はそれだけ言ってまた自分の部屋にこもっちゃったけど、ひなたのことで宣戦布告してるんだってすぐ分かった』
それって、レンタル彼氏のバイトを始めたから…?店のプロフィールに、この仕事を選んだのは自分磨きのためと書いていたのを思い出し、何かがつながった。
『昭も凜翔が変わったのに気付いてビックリしてたし、俺も驚いた。急にどうしたんだろう!?って。でも、納得したよ。ひなたの持ってたレンタル彼氏のプロフィール見て』
優はしみじみと言った。
『思わぬ伏兵だったよ、凜翔君は。……でも、ここへ来て壁にぶつかったみたいだね』
「……」
『もう隠さなくていいよ。ひなたも彼のことが好きなんでしょ?何を迷うことがあるの?』
優しい口調で訊かれ、私は事情を話したくなった。
「昭の今の彼女、凜翔が引き合わせたんだって……。言い訳とかもなく、ただ私のことが好きだからそうしたって、凜翔は言ったの」