レンタル彼氏–恋策–

「三枝さんの言ってた通りの女の子ですね、ひなたさんは」

 彼の柔和な笑みが、無防備な心を貫きそう。そういうことをサラッと言わないでほしい。心臓に悪いから。

 相手は仕事でそうしている、それは分かってるし、彼氏がいるから他の人と恋愛する気なんてない、その心づもりだったのに、うっかりときめいてしまう自分がこわい。

 あどけなさを残した凜翔君も、高いプロ意識を持ってレンタル彼氏をやってるんだろうな。色んな意味で感心し、良い意味で期待を裏切られた……。

 凜翔君との出会いで自分の中に生まれる様々な想いを実感しながら、その日のデートは始まった。

 心晴は3時間コースを予約してくれたので、あと180分も凜翔君と行動を共にしなければならない。大学の講義2コマ分もある。長い。うまく乗り切れるんだろうか?

 駅前から歩き出してすぐ、凜翔君が屈託ない表情で訊いてきた。

「ひなたさんは、普段周りの人達からどんな風に呼ばれてますか?」

「呼び捨てが多いです」

「じゃあ、俺もそうした方がいいですか?」

「そうですね、それでお願いします」

 無表情でぎこちなく答える私とは反対に、凜翔君はリラックスしている感じ。さすがだな。こういう仕事している分、女慣れしてそう。
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