レンタル彼氏–恋策–

『そうだったんだ……』

「ショックだった。凜翔はそういう計算とか策略とかしない人だと思ってたから……」

『ひなたは純粋でまっすぐだから、なおさらショックだよね。分かるよ』

 励ますように言い、優は意見を口にした。

『でもさ、恋愛において腹黒くない人なんているのかな?凜翔君の肩を持つわけじゃないけど、欲しいものを手に入れたくなった時、人って綺麗でばかりいられないと思う』

 その言葉にハッとした。私も優を利用したし、人のこととやかく言えないや。優はそんなつもりで言ったんじゃないだろうけど……。

「そうだね。優の言ってることすごく分かるよ。でも、なんかね、やっぱりショックだったんだ……。凜翔に限ってそんなことはしない!みたいな目で見てたから」

『美化してたってこと?』

「だと思う」

『好きならなおさらだよね。分かるよ、それも。好きって気持ちがすでにフィルターなんだろうし。でもさ、凜翔君って本当に悪いことしたのかな?」

「え……?」

『……考えてみて?たとえ凜翔君が意図的に昭に女の子を近付けたのだとしても、それで勝手に心変わりしたのは昭だよ。昭がしっかりしてれば、凜翔君の思惑通りにはいかなかったと思う』

 それもそうだ!言われて初めて、私は凜翔のことを改めて考え直す心持ちになった。

『それにさ、そのことでひなたはたくさん苦しんだけど、苦しむのももったいないくらい、昭には価値がなかったと思う。元親友として、ここまで昭を悪く言うのはあれだけど……。ひなたは悪くないから。それに、凜翔君はきっと……。ううん、何でもない』

「え……。優?」

『ごめん、そろそろ次の講義始まるから切るよ』

「あ、そっか、そうだよね。わざわざ電話くれてありがとう!」

 最後、何かをごまかすみたいな締め方をされてすごく気になったけど、優につられて私も電話を切った。
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