レンタル彼氏–恋策–
凜翔も緊張しているらしい。私を先に自室へ通すと、ペットボトルのお茶やお菓子を用意して凜翔は戻ってきた。さっきと違い、今度はお互いに向き合って座った。
「ひなたは、10月のレンタルデートが俺との初対面だと思ってるけど、本当はもっと前に会ってるんだよ」
それは、今からちょうど2年前。季節は秋。私が大学1年の頃の話だった。
昭と付き合ってまだ3ヶ月目という、恋愛初期の楽しい時期。昭と会うのが楽しくて仕方ない一方、連日の講義やバイトはハードだった。ようやく大学生活に慣れてきたとはいえ、スケジュール調整がうまく出来ず、体調管理も甘かった。
心晴(こはる)をはじめ大学でできた友達との付き合いも大事にしたかったので交際費がかさむ。だからバイト代はたくさんほしかったし、遊びの誘いはできるだけ応じた。もちろん昭ともたくさん会いたかった。
だけど、昭は昭で友達付き合いが活発なタイプだったので、デートに誘っても断られることがけっこうあり寂しい思いもした。彼と会える時間は、だんだん貴重なものになっていく。
そんな中、久しぶりに昭と会えることになった。しかも、家族と住んでるのに家に来ていいとまで言ってくれた。何が何でも行く!と息巻いて、メイクやオシャレにも普段の倍気合を入れた。
初めて家に呼ばれたその日、疲れがたまっていたらしく微熱があり胸も少し苦しかったけど、たいしたことないと自分をごまかし、昭の家に行った。断ったら、次いつ会えるか分からないから。
最初は無理して元気に振る舞ってたけど、その結果、風邪をこじらせて昭の部屋で寝込むことになってしまった。自力で立つことすらできないほど意識も朦朧(もうろう)とする(後々行った病院で叱られ分かったのだけど、その時私は肺炎になりかけていたらしい)。