レンタル彼氏–恋策–

 たしかに凜翔は紗希ちゃんをその気にさせたかもしれない。でも、それは凜翔の全てじゃない。

 私が悩んだ時、親身に話を聞いてくれた。服選びとか恋愛のグチとか、普通の男の人なら面倒に感じそうなことも嫌がらずに付き合ってくれた。それが凜翔の思い。それも凜翔の側面。


 『自分が見た相手を信じ抜くしかないんだよ』ーーこの前、心晴が言ってくれた言葉。本当にその通りだなと、今、強く思った。


 凜翔が話してくれたことを胸の中で繰り返し、私は尋ねた。

「……さっき言ったよね。親衛隊のことで私を陰から見守ってくれてたって。それって私に罪悪感があったから?」

「うん……」

 軽音楽部の部室で会ってから今日まで、凜翔は私の前に現れなかった。それは罪悪感のせいだった。

 紗希ちゃんと会うまでは連絡先さえ知らないのに凜翔と会えていた。それらの偶然は凜翔が作ってくれてた必然なんだと、この時分かった。

「……昭に紗希を会わせた。そのことで苦しむひなたを見てたクセに、自分のしたこと隠して相談聞いてた。紗希を通してそのことはもうバレてると思ったし、ひなたに嫌われたと思ったら合わせる顔がなかった。ハッキリ拒絶されるのがこわかった……」

「嫌いになってなんかないよ」
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