レンタル彼氏–恋策–
「もう大丈夫だよ。凜翔が助けてくれたの。今、凜翔の家にいる」
『凜翔君ちに!?』
心晴は驚きの声を上げた。歓喜も含まれたような声音だ。私が凜翔に助け出されたことまでは、杏奈からも聞かされていないらしい。
『もしかして、凜翔君と付き合うことになった?』
「うん。ついさっき……」
『やっぱりそうなんだ!おめでとう!よかったね!』
喜びに満ちた心晴の明るい声を聞いて、だんだん実感が湧いていた。凜翔と恋人同士になったんだ、私。
「ありがとう。心晴のおかげだよ。あの日、悩む私にレンタル彼氏を紹介してくれたから」
ひとりではきっと見つけられなかった出会い。最初は戸惑ったけど、レンタルデートという形からでも凜翔の存在を知ることができて本当によかったと思ってる。
『あのね、ひなた、そのことなんだけど……』
気まずそうに言葉を探している気配は、いつもの心晴らしくなかった。
「心晴…?」
『あのね、ひなた……』
そこで突然、声が途切れる。凜翔が私の手からスマホを抜き取ったからだ。
「三枝(さえぐさ)さん、その続きは自分で話します。今までありがとうございました。このお礼はまた改めてさせて下さい」
心晴にそう言い、凜翔は一方的に電話を切ってしまった。何が何なのか分からず、私はうろたえた。
取り上げられたスマホを返されると同時に、私は凜翔に訊いた。
「心晴と知り合いだったの?」
「……うん。三枝さんと出会ったのは、今年の春。大学生になってすぐ、レンタル彼氏のバイトを始めた頃だった」
「そんなに前から?知らなかったよ……」
なんか、少しショック。心晴はそんなこと一言も言ってなかった……。