レンタル彼氏–恋策–
子供の頃の初恋はとても純粋で、思い出すと思わず頬が緩んでしまう、甘くて幼いものだったように思う。
そう。自分の立場とか利益とかプライドとか気にすることなく、もっと綺麗な気持ちで恋をしていたはずだ。今の私とは正反対ーー。
人からは、おとなしそう、純粋な感じ、優しそう、真面目だね、そう言われる。
中身がそうでないとしても見た目がそういう印象を与えることで人の評価を左右するのだなと、改めて驚いた。なぜなら、私は真面目でもなければ優しくもないし純粋さなんて皆無の女だからだ。
とはいえ、そういう女に見られることへの反発心は今のところない。
最低限のメイクはしているけど、生まれつきクッキリした顔立ちの子のように化粧映えしないアッサリした顔。二重まぶただけど目が小さめなので濃いめのアイメイクをしても派手派手しくならない。
その上、洋服はカジュアルな感じを好む。女の子らしいパステルカラーのブラウスや繊細な造りの小物なんて身につけないし、スカートも年に数回しか履かない。
そんな私でも、一応彼氏と呼べる相手がいる。気持ちは全く伴っていないのに、互いを恋人だと認識し合う相手がーー。
夏も終わり、秋の気配が街を寂しく感じさせる頃、私は大学生になって3回目の10月を迎えた。
2ヶ月近くあった長い夏休みの間に21歳になった。そのことを知るのは、幼なじみの親友、三枝(さえぐさ)心晴(こはる)と、彼氏の相馬(そうま)優(ゆう)だけだ。
大学生になって新しい友達は何人か出来たし、映画研究会というサークルに入り合宿なんかにも参加した。毎日が楽しかった。
学内を歩けば所々で顔見知りに会い、立ち話で数分盛り上がる。お昼に大学を抜け出して一緒にご飯に行ったり、お泊まりをして夜通し語り合う友達もいる。
だけど、私にとって、自分をさらけ出し深い付き合いができる女友達は心晴だけだった。