レンタル彼氏–恋策–


 あれからほとんど寝れなかった。

 翌日、予定通り朝から夕方までファミレスのバイトに行った。日曜日だから大学は休み。うちの大学は、休みの日はバイトしたいと言うコが多く、私もそのうちの一人で、昭もそうだった。

 もしかしてと思ったけど、やっぱり今回も昭と同じシフトになった。

 昭と付き合ってから意図的に同じ講義を選択していたので、彼とは2年生の頃から同じペースで学生生活を送っていた。恋人だった頃は嬉しかったその習慣は別れたからといって簡単に変えられるものではなく、現在こうして、ばったり顔を合わせてしまう始末。

「おはよう。今日も夕方まで?」

「うん。ひなたも?」

「そうだよ」

「今日客多いし、昼挟むのダルいな」

「ホントだね」

「テキトーにサボろ」

 別れたことなどなかったかのように、私達は普通に会話していた。恋人だった事実がなかったら、仲の良いバイト同士の関係に見えるだろう。

 バイトの皆はもちろん、社員さんや店長も私達のことを知ってるので、かなり気を遣わせてしまっている。

 昭と別れた時、バイトは辞めようと思ったけど、店長はこう言ってくれた。

「悪いことしたわけじゃないんだから、堂々としてなさい」

 優に告白される前のことだったから、なおさらその言葉は胸にしみた。別れた後はバイトで昭の顔を見るたび泣きたくなったけど、店長や周りに迷惑かけたくなかったし、なるべく普通にしているのが礼儀だと思った。

 優の存在があって支えられたのも本当だけど、失恋後もバイト先で普通に働けることが、私を以前より強くしてくれたんだと思う。
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