レンタル彼氏–恋策–


 忙しい時間帯を何とかやり過ごし、昼過ぎ頃にやっと休憩に入ることが出来た。他のホール担当の子達は午前中に休憩を済ませていたので、私は昭とかち合ってしまった。休憩がまだなのは私達だけだったらしい。

「やっぱり今日も人多かったな」

「夜の人も大変そうだよね」

「だな。ひなたもお疲れ。コレやるよ」

 昭はわざと疲れた顔を作り場を和ませると、店の表にある自販機で売っている缶のココアをくれた。よりにもよって私の好物。

「そこまで気遣わなくていいのに。はい、お金」

「いいって。気持ち」

「……じゃあ、受け取っとく」

「……ああ」

 しばらく無言になる。昭のこういうところが大好きだったけど、今では大嫌いだ。

「ホールって大変だな。ひなた、よく頑張ってるよ」

 人の気も知らず、昭はイスにどっかり座り、普段の私の仕事ぶりを褒める。

 平日は厨房メインの昭も、今日は私と同じくホールで接客を任されていた。最近、私達より長く働いていた先輩が数人、就活のためバイトを辞めてしまったのでホールの人手が不足気味。

「そろそろ新しい人入ってくるといいね」

「店長が求人で募集かけてるけど、なかなか来ねえって」

「私達もいい加減就活しなきゃなんだけどね」

「だな。もう3年の秋だし。時間経つの早いな」

「ホントだね。この前大学入ったばっかりなのに」

「あーあ、ずっとこのままでいれたらいいのにな。社会人大変そう。その前に就職出来るかどうかも怪しいし」

「同感!」
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