レンタル彼氏–恋策–
しみじみと、私達は語り合っていた。
昭と付き合ってた頃は未来のことより今のことしか考えてなくて、将来も当たり前のように昭のそばにいられるものだとばかり思ってた。恋愛さえ充実していれば他のことで恵まれなくても幸せだって信じてた。
それなのに、今ではただのバイト仲間として就職や未来のことを心配するような会話をしている。変わりたくないのに変わっていくんだな。人も、周りも、自分も。
休憩が終わるまでこういう雑談をするのかなと思っていたら、
「優とはうまくいってんの?」
昭の方から、突然恋愛トークを切り出してきた。別れてからそういう話題を避けていたし、昭からもそういう話はしないでみたいな空気が漂っていたので、この時ものすごく驚いた。
動揺を悟られないよう、私は努めて穏やかに返事をした。
「うん、普通に仲良くしてるよ」
「そう」
「そっちはどうなの?彼女と」
会話のノリでさりげなく訊(き)いてみたけど、本当はものすごく気になってる。私を振って選んだ、昭の今の彼女のこと。
少し考え込むような間を置き、昭はあやふやなことを言った。
「うん、まあ、それなりに」
「なにそれー」
笑って流したものの、胸がチクリと痛んだ。元彼なりに、私に気を遣って詳しく話さない、とか?そんな気遣いに、私はもう昭のものではないのだと思い知らされる。
予想に反してズキズキ痛む自分の心もショックだった。まだこんなに昭のことで傷つく余地があったなんて……。