レンタル彼氏–恋策–
車を走らせ、優は言った。
「食べたい物ある?ひなたの好きなところ行くよ」
「そうだなぁ……。ラーメンがいい!」
「いいね、ラーメン。この前学校の友達と美味しいとこ見つけたから、そこ行こっか」
「ホント?やったぁ!楽しみ」
浮かれる私を横目に、優は和やかに笑っていた。ファミレスで働いてるせいか、ファミレスメニューは見飽きて違うものが欲しくなる。
今日は優に別れ話をするつもりだったのに、言い出せないまま楽しい時間を作ろうとしてしまう。自分で自分が分からない。
それに、いま目の前にいる優と、昭の言ってたウワサの内容が合わない。ウワサなんてただでさえアテにならないものだし確証もないんだから、もう気にしない方がいい?
楽しみつつも内心複雑な気分に駆られていると、優がポツリとつぶやいた。
「なんかまだ信じられない。ひなたが彼女になってくれたこと」
「どうしたの?急に」
私の黒さをーー優と付き合うことにした理由を見抜かれたのだと思い、ドキッとした。
「……うん。昭と付き合ってるひなた見て、ずっと可愛いと思ってたから」
「私も意外だったよ。優からそんな風に思われてたなんて」
「本心隠すの得意だから。あの時は理性もあったし、昭の恋を壊したらダメだって自分に言い聞かせてたから」