レンタル彼氏–恋策–
生まれた頃から側にいる心晴のことは、友達という枠を超えてもはや家族や身内という感じがするし、心晴の方もそう思ってくれているらしい。
小さい頃に父親を亡くした心晴は、母親と二人で生きてきた。彼女の事情を知らない人はその境遇を同情したり心配したりしていた。私も、他人だったらそういう反応をしたかもしれない。
心晴は、そういう過去を感じさせないほど明るく優しい心の持ち主だった。自分のことより人のことを優先する。
小学生の頃、心晴と同じクラスになり、なりたい係がかぶったことがあった。その時も心晴は、私にその係を譲ってくれた。嫌な顔ひとつせずに。
中学生にもなると、周りの子はみんな恋愛のことばかり話すようになった。でも、私にはそれらしい相手がいなかった。というより、男子との恋なんて必要としていなかったという方が正しいかもしれない。
私は、心晴のことが大好きだった。
いつも元気で、あっという間に周りを和やかにしてしまう心晴のことが。自分がつらい時も私のことを気にかけてくれる心晴のことが。彼女といると笑顔が絶えなかった。
いつもいつも、私は笑っていた。
これは私の初恋だったのかもしれないと、ひそかに思っている。でも、そうではなかったのかもしれないとも思う。
高校生になって初めて、同じクラスの男子を好きになった。その人とは価値観や食べ物の好みが似ていたから、話していて安心したし楽しかった。
だけど、その人にはすでに他校の彼女がいた。私の想いは実ることなく終わってしまったけど、今でもその人との絡みはいい思い出。
中学生の頃心晴に対して抱いていた淡い恋のような気持ちは疑似恋愛的なもの。つまりは同性への憧れであって、片想い相手への気持ちこそが私の初恋!そう思うことにした。