レンタル彼氏–恋策–
本当に、私は勝手だな。優を責められるほど、彼に恋愛感情を持って付き合っているわけじゃないクセに。
昭に振られた時、心の中で昭に何度も最低と罵ったけど、私も人のこと言えないや……。
家にいてもつらくなるばかりなので心晴の家を訪ねてみたが、心晴のお母さんが出て、心晴は夜までバイトで帰らないと告げられた。仕方ないのでしぶしぶ家に戻った。
「ひなたー、ヒマならさやえんどうのスジ取るの手伝ってー?」
「今そういうことできる気がしない〜」
「つべこべ言ってないでやってくれる?」
「あ、バイト先に忘れ物したから取りに行ってくるー!」
「待ちなさい!?ちょっと!」
お母さんの雑用から逃げるように、ウソをついて外へ出た。見下ろす夕空に、体を包むキンモクセイの匂いに、胸が苦しくなる。
昭と優は数ヶ月前まで親友同士だったのに、私のことがキッカケで縁を切った。親友同士だったのに性格は違ってて、なのに今でもお互いをよく理解してる。
『心の奥では昭のこと信用してるんだと思う』
そんなつもりはなかった。でも、優がそう言うならそうなのかもしれない。自分のことなんて自分では分からないから、他人(ひと)の指摘が正しいということはよくある。
「この先どうしよう……」
考えているようで頭はぼんやりしてしまう。何のアテもなく歩いていたら、昭とよく行っていたカフェに着き、注文まで終えて窓際の丸テーブルに座っていた。
無意識ってこわい。優の言った通り、私はやっぱり今でも心の中で昭のことを優先しているのだろうか?現に、優とはこの店に来たことがない。