レンタル彼氏–恋策–
4 ウソ
凜翔(りひと)の顔を見れず、うつむいた。
これじゃあ、まるでヤキモチ妬いてるみたい。凜翔との初デートは楽しかったけど、別に好きとかそんなんじゃないのに……。
いたたまれなくなり席を立とうとすると、凜翔が尋ねてきた。
「彼氏と何かあった?」
「べ、別に何も……」
「そう?ならいいけど」
いいけどと言いつつ、凜翔は心配そうな顔をやめない。私は私で、平気なフリして残りのミルクティーを口にする。さっぱりした甘さに、次第に冷静さを取り戻した。
そうだよ、落ち着け、落ち着くんだ。昭(あき)から変な話を聞いたり、優(ゆう)と揉めたりで、今日は異常に疲れてる。凜翔に苛立ったのはそのせい!単なる八つ当たりだよ。謝らなきゃ!
「あのさ、ごめ……」
「ここへ来たらひなたに会えそうな気がして。そしたらホントにいるからビックリした」
「え……?」
私のごめんなさいを遮るように、凜翔は言った。
「仕事じゃなかったら、このままひなたとデートしたいな」
柔らかい凜翔の笑顔に、ほっこり癒される。初対面の時からそうだった。精神面は大人なのに、そういうところだけ幼い。
「ありがとう。そんな風に言ってくれて」
「よかった、ひなたも笑顔になれたね」
ホントだ。凜翔につられて笑ってるし、さっきまでのイライラがウソみたいに消えていく。今なら心の底から謝れると思った。