レンタル彼氏–恋策–
「凜翔。さっきはごめんね。嫌なこと言った……。怒っていいんだよ?」
「怒らないよ」
「怒ってよ。今はレンタル中じゃないんだから。私はただの元顧客」
「元顧客!ひなたって面白いね。あははっ」
なぜかウケている。凜翔はおかしそうに笑った後、笑いで潤んだ目を綺麗な指先で拭き、優しい目をした。
「気にしないで?そういう時って誰にでもあるし」
「でも……。凜翔も仕事前にわざわざ声かけてくれたのにさ、私感じ悪すぎる…」
「ひなたが笑ってくれたから、それでおあいこだよ」
本当に、何なんだろう。凜翔は優しすぎる。そういう性格なのかな。にしても甘すぎだよ。『普通』の感覚がマヒしてしまいそうだ。
「こんなにゆっくりしてて、仕事は大丈夫なの?」
「うん。時間に余裕持って来てるから平気」
チョコタルトをありがたく食べると、凜翔は両手で頬杖をつきこちらに身を乗り出してきた。そのせいで互いの顔が近付いて、彼の髪からふわりといい匂いがした。思わずドキッとしてしまう。
「ど、どうしたの?急にっ。近いよっ」
軽くのけぞると、凜翔は唇を尖らせ元の姿勢に戻った。
「ひなたのこと悩ませてるのは、彼氏?」
「え……?そんなことないよっ。尽くしてくれる優しい人だし」
「彼氏、優しいんだ。幸せ?」
「うん。まあまあ」
「まあまあなんだ」
この質問、何だろう?胸がくすぐったい。