レンタル彼氏–恋策–

 でも、凜翔のおかげで、口に出すためらいの気持ちはじょじょに消え、前向きな気分が胸に満ちていた。

「ありがとう。凜翔に聞いてもらえて本当によかった」

「ひなたが楽になれたなら、俺も嬉しい」

「張りつめてたものが、ふっと和らいだかも……」

 もう一度、優に会って素直な気持ちを話そう。それで優を傷つけるのは確実だけど、お互いのためにも、別れるなら早い方がいい。

 気持ちを整えていると、凜翔のスマホのアラームが鳴った。仕事の時間が近いらしい。凜翔は席を立ち、座ったまま彼の顔を見上げる私の頭をポンポンした。

「そろそろ行くね」

「うん。仕事前なのに色々相談乗ってくれてありがとう。頑張ってね!」

「ひなたもね。遠くから応援してるから」

 肩越しに振り返り、凜翔は片手を上げ店を出ていった。

 遠くから応援してる、か。そうだよね。凜翔とはこれきり、二度と会うことはないんだ。あんなに楽しく話した仲なのに……。仕方ないと分かっていても、けっこう寂しかった。

 頭にはまだ、凜翔の手の感覚が残ってる……。

 って、ウジウジしてたらダメだ。凜翔の後押しを無駄にしないよう、これからちゃんとしないと!
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