レンタル彼氏–恋策–


 帰って夕食を済ませると、優から電話がかかってきた。こんなに早く連絡が来るとは思ってなかったので、少しビックリした。

「……はい」

『さっきはごめんね。感情的になってた』

「ううん、私が悪いから」

『さっきあんな別れ方したのにこんなこと言うの勝手なんだけど、もう一度今から会えない?迎えに行くから』

「うん、会お。私も優に話したいことがあるから」


 30分後、車で来てくれた優の運転で、近所の遊歩道にやってきた。夜も遅く、人の往来も少ない。街頭の光が、遊歩道脇に流れる川の水をキラキラさせていた。

 私達はどちらかともなく車を降り、遊歩道の手すりに並んでもたれた。動くと暑い昼間と違い、涼しい風が吹いて気持ちいい。

「寒くない?」

「ちょうどいいよ。優こそ平気?」

「うん。秋とは思えないくらい、室内暑いよね」

「外の方が逆に適温だよね」

「こんな時間に呼び出してごめんね。家の人心配してなかった?」

「大丈夫だよ。夜は時々心晴と遊んでるから、今日もそういうのだと思われてる」

 何でもない会話から一転、優は待っていたとばかりに本題を切り出した。

「さっきは、ひなたの話ちゃんと聞けなくてごめん。昭と何話したのか、教えてくれる?どんな内容でも、聞く準備できてるから」

 そう言われ、私は迷った。自分のことなら全部話すつもりでいたけど、昭から聞いたウワサの件は、絶対優を嫌な気分にさせる。
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