レンタル彼氏–恋策–

 心晴はアイスティーを一気飲みし、晴れ晴れした顔で言った。

「涙なんて似合わない。ひなたは幸せになるべきだよ。優君もそう言いたかったんじゃないかな」

「心晴……」

 そうだよね。悩んでばかりいても前に進めない。優のくれた気持ちを、今はしっかり受け止めたい。

「これからは優のこと大事にするよ。ありがとう、心晴」

「ひなたはやっぱり、笑ってる顔が一番可愛いよ」

「もう、心晴!からかわないの!」

「ホントのことだよ〜」

 心晴のこういう言葉に本気でドキドキしていた中学時代が、遠くに感じた。それでも、彼女を慕う気持ちはこれからも同じ。

「相変わらず仲良いな〜」

 和やかに語り合う私達の席に、無遠慮な男子学生の声が割り入った。

「昭!何で?今講義中じゃ……」

「寝坊した。お前こそゼミはどしたの?」

「教授の学会があるから休みー」

 当たり前のように、昭は私の隣に座った。

「今心晴といるんだから、昭は違う席に行ってよ」
「少しくらいいいじゃん。付き合ってた頃はこうやってよく三人で飯食ってたんだし」
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