レンタル彼氏–恋策–
一方、昭に対して申し訳ない気持ちになることもあった。私とのウワサが原因で、昭の恋愛事情を邪魔しているかもしれないと考えたからだ。昭とは親しかったけど恋愛に関することは何も語り合わなかったので、よけい気になった。
「ごめんね、私とウワサになるの迷惑だったよね……。そのうちウワサされなくなるといいけど」
「迷惑っていうか……。ウワサ、本当のことにする?」
イタズラな瞳で昭にそう訊かれた時、燃え上がるような恋とはこのことなんだと、初めてリアルに体感した。私の返事は決まっていた。
「する!!私でよければ…!」
「ひなたがいいの!」
運良く両思いになり、昭と本物の恋人同士になった。
甘くて夢のような毎日。特に大きなケンカもなく仲良くやっていた。
バイト先も大学も一緒だからいつでも会える。幸せだった。
だけど、それから2年経った今年の7月、
「ごめん。他に好きな人ができた。もうひなたとは会えない」
昭から別れを切り出された。いつの間にか、昭の気持ちは私から離れていたらしい。
いつも優しい彼の変化に、全然気付けなかった。私が鈍感なのか、昭の演技が上手いのか……。どちらだとしても、昭を失った悲しみが大きいことに変わりはなかった。