レンタル彼氏–恋策–
ああ言ったものの、心晴としゃべりながら楽しい買い物ができなくなり、ちょっと寂しい。でも、仕事なんだから仕方ない。一人で買い物して、少しでも大人になるぞ。
あれだけ買う気満々だったのに、好きな系統のショップをいくつ周っても購買欲が湧かなかった。買い物をしてると、たまにこういうことがある。買う気のない時ほどいいものがたくさん見つかり、こうやってお金と気持ちの準備が整ってる時ほど惹かれる物がないという。
ショッピングモール内の通路に等間隔で置かれたベンチに座り、スマホを見た。せっかく来たんだし、ちょっと休んだらまた周ってみよう。
スマホで今年の流行りを検索していると、
「また会えたね。ひなた」
凜翔(りひと)に声をかけられた。彼も一人で買い物をしていたらしく、その手には紙袋が2つ下げられている。再会できた驚きの中で、凜翔が何を買ったのか気になった。
「どうして!?偶然重なりすぎだよっ」
「家、ここから近いんだよ。ひなたもここよく来るの?」
「ううん、初めて。大学の帰りにたまたま来て。さっきまで友達と一緒だったんだけど、今は一人」
「そうなんだ。休憩中?」
「そうなんだけど、なかなかいいものなくて」
休憩したところで、いいものが見つかる気がしない。冬服ほしかったけど、今日は諦めて帰ろうかな。