レンタル彼氏–恋策–
凜翔の言葉から、さらりとした口調に合わない重みを感じる。
「ひなたは自分の魅力を過小評価してるからね。もったいないことしてると思ってたんだよ」
「ありがとう。でも、凜翔の見立てがいいだけだよ。私にはそこまでの魅力ないし」
美人からは程遠い凡人。服も、女の子らしくないカジュアルで無難なものばかり選ぶクセがついていた。
「逆だよ。服がいいから私が良く見えるだけ!制服マジック的な?」
「ひなた。それは違うよ。服は引き立て役。主役はひなただよ」
「そんな風に言ってくれてありがと。凜翔はすごいね」
無理を感じさせない気さくな口調で、女の子の気分を上げてくれる。そういう言葉がスラスラ出てくるなんて、さすがプロのレンタル彼氏だと思う。
「感謝してもらってるところ言いにくいんだけど、ひなたの服選びをしたのは俺のためでもあるから」
「凜翔のためって、どこが?」
「ううん、なんでもない。今の忘れて?」
微笑する凜翔の瞳は、少し意地悪だった。不覚にも、ドキドキしてしまう。
心なしか、凜翔との間に流れる空気が、初対面の頃より赤く色づいていた。そして、私自身、そのことを全く変だと思わず受け入れている。