レンタル彼氏–恋策–
買い物に付き合ってくれたお礼にごちそうするつもりだったのに、凜翔はいつの間にか二人分の会計を済ませてくれていた。多分、私がドリンクバーで席を外した時だと思う。お金を渡そうとすると、
「給料出たばっかりだし、楽しかったから気にしないで?車取ってくるから、ひなたはここにいてね。すぐ戻るから」
凜翔は、ここから近い自宅に車を取りに行った。私は一人ショッピングモール内のベンチで待つことになった。
近いんだし、凜翔んちまで一緒に歩いてもいいと言ったけど、
「買い物で歩き疲れたでしょ?座ってて」
そう言い、凜翔はやんわり私がついていくことを拒んだ。
少し寂しくなった。今日1日で凜翔とけっこう仲良くなれた気がしてたけど、それは私だけだったのかな。友達みたいな関係と思ってるのは私だけで、凜翔は違う?私に自宅を知られたくないんだろうか……。
10分もしないうちに、凜翔は戻ってきた。
「お待たせ!行こっ」
「ちょ、凜翔、手!」
「ひなたが変な人に連れ去られないように、ガードしてるんだよ」
恋人みたいな顔で手をつないでくる凜翔の無邪気さに、顔が熱くなってしまう。そのままショッピングモールの駐車場に連れていかれた。
「レンタル彼氏モード禁止!私達友達でしょ?」
「友達だよ。でも、仕事中は原則車デート禁止だから、俺の車乗るの、ひなたが初めてなんだよ」
「そ、そうなんだ」
なぜか、ホッとしてしまう。凜翔は、こうして誰とでも気軽に手をつないで車デートをしているものだとばかり思っていたから。