レンタル彼氏–恋策–
「私達だけだね」
「時々ドライブの人見かけるけど、地元の人でもあまり来ないみたいで、いつ来てもそんなに混んでないよ」
「そうなんだ。凜翔、しょっちゅう来てるの?」
「うん。考え事したい時とかに」
「そうなんだ。ここ、たしかに落ち着けるよね。思考もまとまりそう」
視界で瞬く夜光。今見ている景色は日常と切り離されている感じがした。どちらかともなく口数が減り、静けさが訪れる。意識して黙っているわけではないのに、手をつないだままなせいか、妙に照れくさかった。
凜翔のことはそんなに知らないのに、いつまでもこんな時間が続けばいいのにと思った。それくらい、凜翔のそばは居心地がよかった。
「手つないで夜景見るなんて、恋人同士みたいだよね」
無言でいるのが恥ずかしくて、わざと、おどけたようにそう言ってみた。デートっぽい過ごし方をするクセに家すら教えてくれない凜翔の反応を、試したかったのかもしれない。
凜翔は久しぶりにこっちを見た。涼しげな表情なのに視線はどこか熱っぽい。
天然なのか計算なのか、凜翔は女性を虜にする才能がある。恋人同士みたいだなんて言ってしまったことを、早くも後悔した。
「俺達、恋人同士みたいだね」
凜翔は、私の言ったことを繰り返した。彼の口グセなんだろうか。