レンタル彼氏–恋策–

「ううん、ウソ!私達は友達だよね、分かってるからっ」

「友達…?どうしてそう思うの?」

「それは、ええと……」

 マズい。心臓がドクンドクンと激しく鼓動し始める。凜翔の髪の匂いが分かるくらい、彼の顔が近付いてきた。

「どうしてって、私には優がいるし、凜翔は私のこと元顧客としか思ってないでしょ?」

「元顧客だなんて思ってないって言ったら?」

「そ、そうだとしても、家くらい教えてくれたっていいのに……。私、ストーカーなんかしないよ?」

「俺の家、そんなに知りたかった?」

「だ、だって、友達なんだしそこまで隠すことないっていうかっ」

 うまく答えられない。凜翔に両手を握られ、全身が熱くなる。優しいその触れ方が、心にも体にも心地いい。

「そうだね。隠すことないんだけど、家教えるのはもっと仲良くなってから、ね?」

 それって、どういう意味!?危ない関係の前触れにしか思えない凜翔の言葉にドキドキしつつ、私は理性でのけぞった。

「わ、分かったから、手、もう離してっ!手っ!」

「可愛い。耳まで赤くなってる」

「そんなとこまで見ないでーっ!」

 そこでようやく、凜翔は手を離してくれた。凜翔の放つ甘くて優しい匂いとつながれた時の手のぬくもりが、心の奥深くまで入ってくるようだった。

 少し経って何とか気持ちが落ち着いてくると、お互いの大学生活の話をした。

「教育学部って、凜翔、将来先生になりたいの?」

「それもいいね。でも、実はこれといった夢があって今の学部に入ったわけじゃないんだ。高校の頃の担任に、学力に見合った学部に入るよう言われて何となくそうしただけで」
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