レンタル彼氏–恋策–
「ねえ、凜翔。お願いがあるんだけど……」
スマホを取り出し、私は言った。
「せっかくだし、電話番号かライン交換しようよ。また色々話したいし、何度か偶然が続いてこうして会えたけど、もう二度と会えないかもしれないしさ……。大学同じだけど今まで全然会えなかったし……」
「そういうのは、もっと仲良くなってからしよ?」
やっぱりそうなるんだ。家すら隠すんだからそういう反応も予想していたけど、こうも壁を作られるとこっちも意地になってしまう。
「仲良しだよ、私達」
恋愛相談もして、ご飯を一緒に食べて、ドライブまで楽しんでる。レンタル彼氏の時間外で。だけど、凜翔はやんわり首を横に振った。
「そうだね。でも、ひなたが彼氏と別れるほど仲良いわけじゃないから」
「そ、そうだよね。分かったよ。なんかごめんね」
「ううん。ひなたに連絡先訊いてもらえて嬉しかったよ。ありがとう」
その言葉にウソはないようだった。凜翔は本気でそう言ってくれているんだろう。だけどやっぱり、違和感を覚えてしまう。番号交換なんて、特別な感情がない異性同士でも普通にするのに……。
優と別れるまで、私とは連絡先の交換をしないーー。凜翔の言い分は理解できたけど、納得はできなかった。
「凜翔って、彼氏いる女の子とは連絡先交換しないの?」
「うん、しないよ」
「そういう考え方、珍しいよね」
「そうかな?」
「そうだよ」