レンタル彼氏–恋策–
「今日はありがとう」
「ひなたと一緒にいられて楽しかった」
「……バイバイッ」
家のそばの公園前で降ろしてもらうと、両手いっぱいの荷物を抱えて家に走った。凜翔の気配を振り切るように、夢中で走った。
運動不足な体は、全然前に進まない。買い物中の楽しい瞬間が、荷物の重みで潰されるようだった。どれだけ走っても、凜翔の車の気配が背中から離れない気がして、よけい胸がしめつけられた。
家に帰ると、お父さんとお母さんは寝ていた。足音を立てないよう自分の部屋に戻り、電気もつけず、凜翔が選んでくれた服を全部ベッドに広げた。
ガラスの靴を片方失い、変身の魔法を解かれたシンデレラのような気分になる。
はじめから分かっていたはず。凜翔に特別な感情を持ってはいけないって。
気持ちを切り替えるためシャワーを浴びたものの、凜翔と過ごした時間が続いているかのように、心も頭も彼のことばかりになる。これではいけない。
現実を知るため、パソコンに向かいレンタル彼氏について検索した。
中には女性と遊ぶ目的でそういう仕事をしている男性もいるという話や、SNSに公開されている一般人の画像を無許可で使い架空のレンタル彼氏をでっち上げている悪質な店の情報もあったけど、心晴の紹介してくれた店はスタッフの教育にも厳しい優良店らしかった。
それを証拠に、『レンタル彼氏 凜翔』で検索すると、心晴が前に見せてくれた店のホームページにたどり着いた。ニックネームで登録している人と本名登録の人、半々らしい。
凜翔は名前だけで苗字の登録はナシ。やっぱり、お客さんに一線引いてる証拠なんだろうなぁ……。本名知られるのはやっぱりこわいもんね。