レンタル彼氏–恋策–

 優とは、昭を通して何度か会ったことがある。三人で講義を受けたり、飲みに行ったこともあった。

 だからって彼氏の親友からそんな風に想われているとは考えてなかったので、優に告白された時は驚いた。優は昭よりモテるし、学内でも人気がある。当然、交際も断るつもりだった。

 でも、優に返事をする、まさにその時、私の中に悪魔が現れた。醜悪な自分の姿を隠した、その姿が。

(もし今私が優と付き合ったら、昭は絶対気を悪くする。新しい恋を見つけた私のことが惜しくなってヨリを戻そうと思ってくれるかもしれない!そうじゃなくても、悔しがってくれると思う!)

 浅はかだったと自分でも思う。

 一度離れた気持ちはそんな簡単に戻らない。

 それは分かっていたけど、優に告白された瞬間、失恋の悲しみは昭への復讐心に変わった。

 相手の都合で一方的にフラれた身として、少しでも相手にも痛みを返したいと考えた。

「こんな私でいいなら……」

 傷心中のはかない女を演じて、優の告白を受け入れた。

 昭を傷付けたい、優との関係を知った昭に動揺してほしい、そんな思いしかなかった。
< 7 / 165 >

この作品をシェア

pagetop