レンタル彼氏–恋策–

「変わったな、ひなた」

「そうかな?」

 最近、昼間でも肌寒いので、凜翔に選んでもらった冬服を大学に着て行っている。昭だけでなく、廊下で会う女友達やサークルの人達からも印象が変わったと言われることが増えた。

「優のおかげ?」

「優は関係ないよ」

「え……?うまくいってんだろ?」

「う、うん!昨日もボーリング行って楽しんできたしっ」

 私のせいで変な空気になりかけ、ドキッとした。無意識のうちに「優は関係ない」と言い切ってしまった、自分の冷たいセリフに私自身驚いた。

 昭も何かを感じたらしく、しばらく黙り込んだ。

「……思ったけどさ、優と付き合ったのって妥協じゃん?」

 昭は言った。

「俺に振られてショック受けて、そんな時に告白されたら、相手が誰でもよくなるんじゃない?そういう時に付き合う男って、その先好きになること絶対ないと思うけど……」

 心臓が嫌な音を立てた。

「そんなんじゃないよ!優のこと、ちゃんと好きだし!」

 立ち上がり、次の講義が開かれる教室に向かった。昭の視線を背中に感じて、足が速くなる。

 優のこと、好きだよ。付き合いだしたばかりの頃より、ずっと……。

 何度も心の中でそう繰り返した。繰り返せば繰り返すほど、あの時のセリフを思い出してしまうのはなぜ?

『俺のこと好きになって!』

 心晴の紹介で初めて凜翔とデートした日の別れ際に言われた、思いがけない言葉。凜翔の大きな声を聞いたのは、あれが最初で最後だった。

 凜翔には、好きな人がいるのに……。
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