レンタル彼氏–恋策–
「優といると、安心する。昭とは全然違って意地悪なこと言ってこないし、傷付けないように接してくれてるのが分かる。なのに、何でだろ……。最近、凜翔のことばっかり頭に浮かんでくる。今日なんて最悪だったんだよ?昭(あき)のこと凜翔と見間違うし、声も聞き間違えるし!ありえないよね!?」
「それは重症だね」
「だよね?」
両手で頭を抱え、私はうつむいた。
「紹介してくれた心晴の前でこんなこと言うのひどいんだけど、レンタル彼氏って恋心を売りにしてるような人達だから絶対ハマらない!って決めてた。凜翔のこともすぐに忘れるつもりだった」
でも、これって全然忘れてないっ!
「家の場所はおろか、連絡先すら教えてくれないような人を気にしてたってムダなの分かってるのに〜っ!」
たまらずもだえる私を、心晴は笑顔でなだめた。
「たしかに凜翔君って謎多いけど、ひなたの話聞いてる感じだと、危ない感じはしないけどなぁ」
「どこが?何もかも怪しく思えてしょうがないんだけどっ」
「車のこととかさ。男の人って車好きな人多いから、乗せる人にも厳しいって聞いたことがあるんだよ。凜翔君みたいに免許取りたてならなおさら、色んな人乗せてあちこち走りたいって思うだろうし」
たしかに。心晴も、車を買ったばかりの頃、毎日私を誘ってどこへでも連れて行ってくれた。電車とバスがあれば不自由しないこの土地にいても、車で出かけると別の発見があって楽しかった。