レンタル彼氏–恋策–

「何の話だった?」

「大学祭のことだよ。映画研究会は出し物決まった?」

「うん。いつもと同じ、体育館で人気映画の上映会。他のサークルの子達からはもっと工夫すればいいのにって言われる」

「そうなんだ。でも、俺はそれ好きだよ。去年の上映会も面白かったし」

 この時期になると、学内は普段より活気づく。11月末に行われる大学祭の準備で、各サークルが盛り上がるからだ。

「優はバスケ同好会だったよね。何やるか決まったの?」

「今年も食べ物。豚汁作って売るんだって。バスケ関係なくない?」

「いいと思うよ。豚汁好きだし、バスケ同好会の屋台も絶対行くね」

「特別サービスするよ。他の人には内緒で」

 変わらない優の優しさにホッとする半面、最近は胸が痛む。私は、ちゃんと彼女やれてるのかな?

「あのさ、ひなた」

「何?」

「……」

 一拍置くと、優は緊張した面持ちで話を切り出した。

「大学祭終わったらすぐ、旅行行かない?っていっても、隣の県だからすぐ着くような場所なんだけど……」

「ってことは、日帰り?」

「……泊まりなんだけど、どう?」

 優は、ためらいがちにこっちの様子を見た。

 泊まりの旅行。色んな意味で躊躇し、返事につまる。それって、つまりそういうことだよね?
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