レンタル彼氏–恋策–
「来年になったら本格的に就活しないといけなくなるし、行くなら今のうちかなって。大学祭終わればサークルや同好会の活動も落ち着くし、付き合ってから全然そういうイベントっぽいことしてあげられなかったから」
「そんなの気にしなくていいのに……。それに、大学祭の後は大事な用事があって、旅行は無理かもしれないんだ」
優にはまだ話せていなかった、心晴のことを簡潔に話した。
「心晴んちの引っ越しがちょうど大学祭の直後で、荷物運びとか手伝う約束してるの。そのまま向こうに行って、数日向こうに泊まらせてもらう予定で……」
手伝いたいというのはもちろんだけど、それは心晴のお願いでもあった。お母さんと一緒とはいえ、よく知らない土地で暮らすことはやっぱり不安だと心晴は言ってた。でも、引っ越し後からしばらく私が泊まれば、新しい土地でやっていく心の準備もできそうだと喜んでくれた。
「ごめんね、優。旅行の提案はホントに嬉しいけど、出来る限りのことで今は心晴のこと支えたいんだ。今同じバイト先にいる彼氏とも遠距離恋愛になるから寂しいと思うし……」
「そうなんだ。心晴ちゃん大変だったんだね。分かったよ。今は心晴ちゃんのことだけ考えてあげて」
「ありがとう…!」
優には申し訳ないけど、ホッとした。それは、心晴の手伝いを認めてもらえたことに対してではなく、優と旅行に行かずにすむという安堵だったのに、私は自覚しようとせず、本音を曖昧にした。
その感情と向き合ってしまったら、今の平穏な生活がガラリと変わってしまう気がして……。